経営の神様と言われた松下幸之助は、電気が日本の各家庭に普及する時代を思い描き、激動の時代で幾多の困難を乗り越えた。
平成に生まれて令和を生きる私たちは、幸いにも不自由は少なく、恵まれたときを過ごした。
一方で、明るい未来の時代の姿を描き辛くなっている。
私は予てより、私たちの未来がどうなるかに興味があったのだが、起業に至るに際して「私自身が私たちの未来でありたい」と考えるようになった。そう、彼のように。
松下幸之助は何をなしたか
松下幸之助は単に企業を成功に導いただけでなく、その経営理念や社会への貢献活動を通じて、日本のみならず世界中の経営実践や社会活動に多大な影響を与えた人物である。
ところが、令和の今では、「松下幸之助」にピンと来ない方もいるかもしれない。
パナソニック創業
そう、パナソニックの創業者である。
パナソニックは、2008年まで「松下電器産業」が保有する「ブランド名」だったのた。
「パナソニック」というブランド名は、松下電器産業が海外市場向けに「Panasonic」という商標を採用し、主にオーディオ機器などの製品を展開していたものだ。
また、日本国内では長らく「ナショナル」ブランドも並行して使用されていたが、グローバルな統一ブランド戦略の一環として、社名変更とともに「パナソニック」ブランドが正式に企業名および統一ブランドとして確立されることになった。
つまり、創業から今日までの間で、松下電器産業だった時代の方が長いのだ。
CSRの先駆者
松下は経済活動を通じて社会全体に貢献することの重要性を強調し、企業の社会的責任(CSR)の先駆者とも言われている。彼は教育や文化の振興にも力を入れ、後進の育成や地域社会への貢献にも尽力した。
経営の目的を「社会の幸福に貢献すること」と位置づけ、企業活動自体が社会に対する貢献の手段であると説いた。事業活動の一環として地域住民が利用可能な施設(集会所、文化センター、図書館など)の整備を行い、戦後復興期の地域コミュニティを支えたのだ。
昨今では、どの上場企業のIRにも”SDGsへの取組み”が載っているが、半世紀前からそれを全面に押し出すこともなくやっていたのだ。
「企業は社会の公器」という理念を掲げ、以下3つを企業の社会的責任として確立した。
- 一、本業を通じた社会貢献
- 二、適正利益の社会還元
- 三、社会との調和
松下幸之助の生い立ち
創業に至るまで
1894年(明治27年)に和歌山県で生まれた。家庭の事情で小学校を4年で中退し、大阪に出て丁稚奉公となる。月に一度の休日に街に出た松下少年は、生まれ故郷の和歌山にはなかった市電(路面電車)を見て電気の時代の到来を予測し、電気に関わる仕事に憧れる。
1910年、16歳の頃に、大阪電灯に見習工として入社。そこから工事主任にまで抜擢されるものの、電力を供給するだけでは、「家庭をより便利に、より楽にする」という夢の実現に限界を感じ、自らか家電製品を作る会社を興すのである。
松下少年の心のなかには、寒い台所で炊事をし、あかぎれの手で洗濯する母親の姿が記憶にあった。
1918年(大正7年)に24歳で、松下電器器具製作所という名で創業する。
産業人としての使命に目覚める
「闡明(せんめい)」という言葉を松下は使った。
闡明とは、はっきりしていなかった道理や意義を明らかにすることである。
産業人としての使命を見出したときのことであり、1976年に著書『実践経営哲学』の冒頭で「まず経営理念を確立すること」と述べている。
経営が拡大するにつれ、代理店制度を作るがうまく軌道に乗らなかったり、税務署との見解の相違が起こったりと、悩む日々が続いた。
しかし、「松下電器は社会からの預かり物である。忠実にその責務を果たさなければならない」という考え方に目覚め、終生「企業は公器である」という考えに徹していくのである。
私たちは松下から何を学ぶか
インターネットの会社(WEB広告代理店やアプリ開発会社)に入社し、その後起業した私である。
現在の生業としているのはインターネット広告運用である。
インターネット上に広告を供給することは、私にとっての何なのだろうかと、松下の経営哲学に触れて考えるところだ。勿論広告だって素晴らしい仕事である。情報で人を助けているはずだ。
経営の目的を「社会の幸福に貢献すること」と位置づけた彼のように、私も「ほんの少しでも、社会を幸福にする、足しになれば」と思いやっているつもりだ。まだまだ、私は経営者として進化し、脱皮しないといけない。
今回、松下の生い立ちについて調べ、思ったことは、「とはいえ50年経営をして、至った結論である」というものだ。
行き急ぐものではないのかもしれない。しかし、今の時代は、志なく生きるには長すぎるのかもしれない。
「寒い台所で炊事をし、あかぎれの手で洗濯する母親の姿」が心にあった彼のように、私たち起業家は、助けたいユーザーのことを心に、少しでも早く助けるために、サービスの検証を行うべきだ。
そんな生き急ぎ方をしたいと思った。
ひとりのユーザーを助けることができれば、もっと多くのユーザーを助けられるようになり、そして社会の幸福に貢献することができるのだろう。
闡明までの時間を短くする方法
現代ではAIを使える。
2024年11月に、「松下幸之助」再現AIが開発された。まだパナソニックが研究用に開発したものであり、一般に利用できるサービスではない。しかし、これには未来を感じた。
私は、現代っ子だからこそ、先人が時間をかけてたどり着いた真理を無駄にすることなく学び、先人より早くに次の真理にたどり着きたい。
(私は漫画『僕のヒーロアカデミア』が好きなのだが、ワンフォーオール歴代継承者の個性を使えるみたいなことがAIで実現できると思っている)
それが今を生きる私たちができる、満たされている私たちの時代での社会貢献であると思っている。
社会全体を覆う強烈なペインは松下の時代ほどにはない一方、声にならないペインが蔓延する社会と、そして日本では少子高齢化により課題は増える一方の未来である。
だからこそ、先回りして、私自身が未来になりたいと改めて思った。