作成日:2017.10.28  /  最終更新日:2020.03.13

HP制作会社のマッチングサイト「さぶみっと」はなぜ終了したのか?

MORII RYOJI

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Webサイト制作の受発注ができるマッチングサイト「さぶみっと」は双方完全無料ということもあり、制作会社で働く人なら一度は聞いたことがあるはず。その「さぶみっと」が2017年9月29日にサービスを終了していた。公式ページでは以下のように終了した経緯を説明している。

「さぶみっと!サイト制作マッチング」は2001年5月より、Web制作に特化したビジネスマッチングサイトとして運営を開始以来16年間、大変多くの皆さまにご利用をいただいておりました。当サイトはすべてのユーザー様に無料でご利用をいただき、登録料や成約に伴う手数料なども一切いただかずに、全国のWeb制作者様およびWeb担当者様のビジネス向上の場になればと思い運営を行ってまいりました。

また、オンラインだけのやりとりだけではなく、2009年からはWeb制作者向けのセミナーや、交流会イベント「さぶみっと!オフ会」などを全国各地で開催を行ってまいりました。当サイトを通じて非常に多くのご縁が生まれ、現在弊社が提供する他サービスの発展にも大きな功績となりましたが、弊社および「さぶみっと!」が目指す展望と乖離が生じていたこともあり今回の判断となりました。

2001年5月よりスタートし、双方完全無料で利用できるという点で、フリーランスだけでなく、数多くの制作会社も登録しており、2017年5月時点で11,593件(個人5,404件、法人6,189件)が登録し、依頼総数は19,789件となっていた。

「ランサーズ」「クラウドワークス」といったクラウドソーシング系のサービスが浸透する前(2012年以前)、登録料や成果報酬費用など一切の費用が掛からず個人でも登録できたため、私自身よく活用していた。

「さぶみっと」にはホームページの制作以外にも、バナー作成やECサイトの開発依頼など、大小様々な案件が多数掲載されていた。マッチング系のサイトは既に終了した「楽天ビジネス」が当時は有名で、受注者側は月額課金方式だったものの、「さぶみっと」と「楽天ビジネス」の2強だった印象がある。

10年前はWordpressのような簡単に更新できるCMSはまだまだ浸透しておらず、CSSでの表現は限定的でテーブルでのレイアウトで実装するケースが多く、IEのバグと戦う必要があったりしたが、ホームページ制作の予算帯は最低でも30万円で、50万円くらいが相場だった。

しかし、クラウドソーシングが浸透し始めた2012年頃から、「10万~20万円でホームページを作ってくれ」というような案件が増え始めた。この背景には「ホームページ制作」という事業上、パソコン一つで起業できるため、フリーランス・制作会社が急増して、価格競争に陥ったと言われている。

テンプレートデザインをそのまま当て込む形で十分というようなクライアントならまだしも、マッチングサイトを10万円で作ってくれという、無理ゲー過ぎる案件もあったりする。相場のわからない個人事業主ならまだしも、法人企業でもそういった予算帯の案件があり、近年の「さぶみっと」でもそういった品質の低い案件が増えている傾向にあった。

マッチングサービスというのは性質上、無法地帯になりやすい。

提案を募集したのにも関わらず、興味のない提案には断りの連絡を一切入れなかったり、ただ相場を把握したかっただけというような発注者が少なからず存在する。逆に受注者側も登録に審査がないため、全く実績がなかったり、ソーソコードや画像を丸パクリするような質の悪い個人・会社が登録してしまう可能性がある。

これはホームページ制作の一括見積もりができるサービスでも同じことが言え、案件を1件1万円で紹介してもらったのに、途中で連絡が取れなくなった…という制作会社の社長の愚痴を聞いたことがある。

一括見積もり系サイトは非常に参入障壁が低く、LPを一枚作成して「ホームページ制作 一括見積もり」というワードでリスティング広告を打てば、発注者側の案件が簡単に獲得できる。そしてその案件を制作会社に「1件1万円で紹介しますよ~」「成約フィー30%で紹介しますよ~」と営業するだけで、ビジネスモデルとして成り立ってしまうため、非常に競合が多い。(これはWeb業界だけでなく、相見積もりを取る業界全般で同じことが言える)

一括見積もりができるサービスを「マッチングサイト」と呼びたくはないが、こういった見積もりサービスが乱立し、クラウドソーシング系のサービスが流行った影響により、案件数の減少+質が下がり、「さぶみっと」が終了に至ったのではないのかと分析している。

「楽天ビジネス」が2015年に終了し、「さぶみっと」が今年終了することになり、ビジネスマッチングサイトを提供するプレイヤーは年々減少傾向にある。今現在「マッチングサイト」と呼べる規模感のサービスはクラウドソーシング以外だと「比較ビズ」「発注ナビ」「ネクスゲート」あたりか(全て発注者側は無料で受注者が有料、月額課金方式)

一括見積もりサイトやクラウドソーシング系のサービスは、実績ではなく料金で比較される傾向があるので、制作会社側は嫌う傾向があるが、仕事を受けるためには安請け合いせねば…という会社も多いはず。発注者側と受注者側が双方ハッピーになれるようなサービス。誰か開発してくれないかなぁ…。

MORII RYOJI

MORII RYOJI

士業に特化したホームページ制作会社オルトベースの代表。24歳の頃に何か面白いWebサービスを開発するため、自分自身の忘備録としてスタートアップのビジネスモデルをまとめ始めたのが「WebFolio」で今年で5年目。何かあれば気軽にFacebookから連絡してください。

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