皆さん、世界のウェブサイトの数をご存知でしょうか。インターネットが普及し始めた2000年頃、世界のウェブサイトの数は約1,700万ほどであり、それからまだ20年程しか経っていない今現在、その数は17億を超え、利用するユーザー数は45億人を超えている。
今ではペライチやWixなど、その他ノーコードで初心者でもすぐにウェブサイトが作れるようなサービスを提供している会社も出てきてる。しかしながらまだまだ多くのウェブサイトはWEB制作会社によって作られたものであり、Baseconnectによると現在、日本国内には17,000社以上のWEB制作会社が存在しており、掲載されていない個人事業主なども含めると同様のサービスを提供している会社が相当数ある。
今回は、15年前まではそのような、数多あるWEB制作会社の1社に過ぎなかったジオコードが、いかにして上場まで辿り着き今なお成長し続けているのか、その背景を探るべくこれまでの沿革や独自の強み、具体的な事業内容などを紐解いていく。
目次
ジオコードとは
2005年2月に現社長の原口大輔氏が創業。原口氏は、当時まだSEO対策という取り組みがメジャーではなかった時に、渋谷にある某IT企業の机と電話を借りて一人で営業活動を開始している。
今では、売上高約30億、社員数129名(2020年9月)となり、設立から14期連続増収を果たし、2020年11月26日に東証ジャスダック・スタンダード市場に上場。
働きがいのある会社ランキングにも4年連続TOP10に選出されており、社員にとって働きがいのある魅力的な会社作りにも力を入れている。
事業としては、中堅・中小企業に対して、Webマーケティングの成果を高めるための各種サービス及び、クラウド型業務支援ツールをSaaS形態で提供している。
大きくは、Webマーケティング事業とクラウド事業の2つに別れているが、現状売上のほぼ9割以上はWebマーケティング事業での販売実績である。セグメントごとの販売実績に関しては、以下の図の通りであり、WEBマーケティング事業の中でも売上の大部分はWeb広告とSEO対策のサービスである。
ちなみに、競合関係にあたるSpeeeの今期の同様事業セグメントの業績は以下の図である。
参照元:2020年9月決算説明資料(MarTech事業) | 株式会社Speee
ジオコードのWebマーケティング事業に類似するSpeeeのMarTech事業は、SEO対策サービスを主としてるWebアナリティクス、運用型広告プロモーションのトレーディングデスク、データマーケティングのPAAM、ネイティブ広告アドネットワークのUZOU、という構成で4つのサービスに別れている。
ジオコードのSEO対策、Web広告の合計売上は約26億であり、SpeeeのMarTech事業は約57億ということで、ほぼ倍近い数字である。
直近の業績
参照元:売上推移|株式会社ジオコード
先ほども簡単にご紹介したが、同社は設立から14期連続増収(14期は決算期修正)を続けており、今期売上約30億(前期比+22.9%)、営業利益約1.5億(前期比+225.5%)。
増収を続けている要因として、同社が提供しているビジネスがストック型という特徴があり、サービス自体も継続して改善を続けるような内容であるため、短期的な解約も少ないことがあげられる。
また、インターネット広告費は毎年2桁の成長率が続き、19年には2兆1,048億円と、テレビメディア広告費の1兆8,612億円を初めて上回ったこともあり、市場自体が拡大していることも追い風となっている。
具体的な事業内容
中堅・中小企業に対して、Webマーケティングの成果を高めるためのWebマーケティング事業とクラウド型業務支援ツールをSaaS形態で提供しているクラウド事業の2つがある。
それぞれ更にSEO対策、ウェブ広告、WEB制作と、ネクストSFA、ネクストICカードサービスにより構成されている。
Webマーケティング事業
SEO対策
Web上のキーワード検索において顧客のサイトをWeb上の上位に表示させるための施策であり、同社は創業間もない2005年より同業務を行っている。優先的に対策を行うべきキーワードの選定等のSEOコンサルティングに留まらず、Webサイトの内部構造の改善作業や、Webサイトに掲載する記事の作成、UI/UXの改善までを行い、顧客のWebマーケティングの目標である資料請求や見積もり等のCV獲得の最大化まで一貫したサービスを提供。
Web広告
2009年以降、Web広告全般の運用代行業務を行っている。GoogleLLCやZホールディングスの子会社であるヤフー等が提供する、検索エンジンで検索されたキーワードと関連性の高い広告を表示するリスティング広告や、コンテンツ連動型広告を主軸に、FacebookやLINE等が提供するSNS広告等も含め幅広い広告媒体に対応した運用を代行。
Webサイト制作
2006年以降、Webサイトの企画・制作・保守運用サービスを行っている。Webサイトの企画・制作では、コーポレートサイトを始め、サービスサイト、ECサイト、広告用のランディングページ等の多種多様なサイトを手掛け、保守運用では、Webサイトの更新作業、アプリケーションの保守、Webサーバーやドメイン、SSL証明書の管理・運用等を代行。SEO対策やWeb広告で培ったノウハウを活用し、企画設計の段階から集客を意識したWebサイトを制作。
クラウド事業
ネクストSFAでは、見込み顧客や商談履歴の管理から案件成立後の顧客管理までの営業プロセスを見える化して、効率的に管理できる業務支援を手がけており、ネクストICカードでは、SuicaやPASMO等の交通系ICカードを利用して、勤怠管理や交通費精算に加え、交際費や会議費等の経費精算も行える業務支援を手がけている。
同事業は、現在売上構成比率では1割にも満たないが、原口社長は今後新機能開発と販売拡大に力を入れることで収益基盤が確立されれば、現状の5%から15%に拡大する可能性があるとのことだ。
ジオコードの特徴と優位性
冒頭申し上げたように、WEB制作会社はじめとした同社の領域はプレイヤーがかなり多く、14年連続増収、さらに上場まで果たした同社には何かしらの特徴、強みがあるはずである。
まず、Webマーケティングに不可欠のサービスを一社完結で提供していることが挙げられる。同社は顧客のWebマーケティング活動に不可欠のSEO対策、Web広告、Webサイト制作を一社完結で提供することにより、顧客の課題解決に向けた適切なサービスを提供できる体制になっている。
クラウド事業でもシステムを自社開発しており、設立以来「Webのすべてを一社完結」にこだわりつづけ、SEO・リスティング・WEB政策のすべてを自社開発していること。現在、SEOの自社開発が可能な企業は国内に10社ほどしかなく、ジオコードはその中の1社である。
また、SEO周辺の対策、コンサルティングだけではなく、Webサイトに掲載する記事の作成に加え、ここ最近非常に重要視されているUI/UXの改善まで併せて行うことにより、検索結果の上位表示を超えてCV獲得の最大化まで踏み込んだサービスの提供が可能なことである。
競合
Web広告の分野は、参入企業が多く競合先は多いが、同社は顧客の月間広告予算が50万円から200万円程度の中堅・中小企業をメインターゲットとしており、この分野では同社が広告のみならずWebマーケティング全般のサービスを提供していること等もあり、競合先は比較的少ない。
大企業や準大手企業を顧客とする会社には、サイバーエージェントやデジタルホールディングス傘下のオプトやソウルドアウト、Orchestra Holdings等がある。小規模企業・個人事業主を顧客とする会社には、Branding Technologyがあり、SEO対策の分野では、上述したSpeeeがある。
ネクストICカードの競合先としては、今や時価総額4300億程(2020年12月段階)で急成長している、楽楽精算を提供するラクスがある。
ネクストSFAの競合先としては、全世界及び日本でトップシェアのSalesforceはもちろんのこと、Senses(センシーズ)を展開すマツリカなど、スタートアップを中心とするSaaS系企業が多数乱立している。ジオコードは低価格を武器にSalesforceからの顧客切り替えを進めていくようだ。
今後の成長戦略
同社は今後の成長戦略として、以下3つの取り組みを掲げている。
・SEO対策やUI/UX改善等のWebサイト(オーガニックマーケティング)
・ネクストSFAの拡販と機能拡充
・地方銀行等の金融機関との提携による、地方優良顧客の開拓
オーガニックマーケティング
サービス内容をSEO対策コンサルティング、コンテンツコンサルティング、UI/UX改善コンサルティング、サイト修正指示・作業代行等に細分化し、それぞれの成果を顧客にわかりやすく説明できるようにするとともに、顧客が強化を必要と考える機能を選択できる体制を構築するとしている。
ネクストSFA
自社メディア等を活用して顧客拡大を行うとともに、Webマーケティング事業の顧客向けに機能拡充を行う方針である。現状のネクストSFAの機能は、対法人ビジネスを行う顧客向けになっている一方で、同社のWebマーケティング事業の顧客は、対個人向けビジネスを行う顧客が多いため、個人顧客の管理システムの機能開発を行っていく。
この結果、オーガニックマーケティングやWeb広告により資料請求・見積もり等のCVを達成した顧客に対して、ネクストSFAを導入することで、その後に実際の受注や売上高に効率的につなげることを目指している。
地方優良顧客の開拓
地方銀行から顧客の紹介を受けることで顧客拡大を目指す。東京においては、広告費のネット化率が高く、競争も激しいが、地方では広告のネット化率が低く、今後の開拓余地は大きいとしている。
銀行提携の他社事例
同社が今後の戦略として掲げている地方銀行等との提携に関して、ご存知の方もいるかもしれないが、このような取り組みは実は既に多くの会社が進めており、特に低金利の流れやデジタル化が加速した数年前から行われており、その背景になるのは金融機関がこれまでのビジネスモデルでは立ち行かなくなり、収益構造の見直しや異業種との積極的な連携が迫られていたという事実である。
例えばいくつか例をあげると、バックオフィス業務自動化サービスを提供しているfreeeと西日本シティ銀行の提携や最近クラウドファンディングのCMでも有名なマクアケと千葉銀行との提携、マニュアル作成・共有プラットフォーム「Teachme Biz」を提供しているスタディストと北海道銀行の提携など、他にも多くの事例がある。
このような流れの中で、同様のサービスを展開している会社にとってはスピード勝負のところもあり、今後は銀行との提携に限らず自社だけではなく様々な企業との協業が重要になってくると思う。
総括
今回は、このコロナ環境下という大変革が求められた年の末に上場を果たしたジオコードについて紐解いていったが、個人的にはジオコードの上場は多くの会社にとって夢を与えた側面もあるのではないかと思う。
沿革をご覧いただければお分かりの通り、立ち上げ時は何の差別化要素もないWEB制作会社から始まり初年度2,300万、翌年度3,700万の売上と特別スタートから急成長している会社でもなく、特異なサービスを提供していたわけでもない。
そのジオコードが、自社サービスをはじめ様々な取り組みにチャレンジしながら、15年で上場まで果たしたというのは、WEB業界だけではなく、差別化がなかなか図れないような業界、企業にとって、これからチャレンジしようという意欲や将来の成長に向けた取り組みを積極的に行っていく勇気を与えられる存在ではないだろうか。