コロナが本格的になってきた4月、5月頃から、恐らく多くの方は自宅にいる時間が増え、かつ気軽に外に出られる機会も少なくなってきたため、自宅で出来ることを色々と考え、自宅での過ごし方にかなり頭を使ったのではないでしょうか。
そのような状況下で、家の中を整理整頓したいという意識や、節約したいという意識が高まり、メルカリなどで自分の不用品を出品する人も増えたと思う。
メルカリをはじめとした最近の中古市場、リユース市場は年々拡大をしており、このような流れの中で今回、その市場の代表的な1社とも言えるジモティーについて取り上げたいと思う。
ジモティーという名前は多くの方がご存知だと思うが、その具体的なビジネスモデルや収益構造などはまだまだ知られていない部分や、実際に利用されている方もそこまで多くはないのではと思い、その内容を紐解いていく。
目次
ジモティーとは
参照元:ジモティー 無料の広告掲示板
2011年2月、リクルート出身の加藤貴博氏が創業し、同年5月にインフィニティ・ベンチャーズLLP(以下、IVP)からシード資金を調達し、実は当初はIVPの小野裕史氏を代表として立ち上がった事業である。
株主構成も特徴的であり、筆頭株主は2014年4月に資本参加したオプトホールディングス、2番目の大株主はNTTドコモであり、この2社の保有比率合計は全体の35%を占める。
NTTドコモからは2019年より出資を受けて提携を結びおり、dメニュー経由でジモティーを使えるようになったことで、ドコモ利用者を取り込めるような仕組みを構築している。
サービスとしては、地元で情報を探す人と発信したい人をマッチングするプラットフォームであり、地域や目的によって分類された募集広告を、一覧形式で掲載する広告媒体のひとつであるクラシファイドという形態で運営しているサイトである。
近隣の住人や小規模事業者が手数料無料で簡単に取引できる仕組みを提供しており、メルカリなどのオンラインのみでやり取りが完結するフリマアプリと違い、直接会って取引を行うことが原則であり、地元同士の方々が取引を行うことを前提としている点が特徴となっている。
ジモティーは2011年4月からサービスを開始し、2020年2月7日に東証マザーズに上場を果たしたが、その立ち上げの際に参考にしたのがアメリカの老舗クラシファイド「クレイグズリスト」というサイト、企業である。クレイグズリストは1995年にサービスを開始している非常に古いサイトであるが、今でもUIなどはほとんど変わっておらず、運営に関しても数十人ほどと少人数だが、毎月20億ページレビューを超えるアクセスがあり、年間売上高は1000億円以上とかなりの収益を挙げている。
ちなみに、クレイグズリストの中国版、インド版も存在しており、それぞれ58.com、Quikrというサイトである。
直近の業績
2020年12月期第3四半期の業績は売上約10億(前期比+9%)、営業利益約2.9億(前期比+91%)であり、通気の予想としては売上約14億、営業利益約3億としている。
また、PV数、投稿数に関しては、直近月次平均でPV数が約7億(前期比+31%)、投稿数は80万(前期比+26%)で推移している。
やはり多くのネット企業同様に、今回のコロナウイルスの影響で、ジモティーに関しては地域情報サイトの必要性が増大し、前四半期に引き続き事業計画を上回り今年に入ってから大幅な水準で成長をしている。
ビジネスモデル
先述した通り、ジモティーのモデルは地元で情報を探す人と発信したい人をマッチングさせるプラットフォームであり、生活の中で生まれる問題を地域の人・お店同士で補い合える仕組みを提供しており、日本全国を網羅している地域と、それぞれに幅広く細分化されたカテゴリにより、ユーザー間のマッチング機会を提供しているサービスである。
ジモティーのユーザーは主に高年齢層(40歳以上が74%程、50歳以上に限っても40%程)が多く、かつ主婦層や子供のいる世帯の利用が多い(女性ユーザーの比率は59%程、子供のいる世帯の利用が67%程)。このユーザーの投稿によりサイトのほとんどのコンテンツが生成されており、当然ながら投稿数の増加によりSEOも強化されることから、広告以外では投稿数とSEOにより流入するユーザーが連動するモデルとなっている。
収益構造については後ほど詳しく説明するが、簡単に説明すると、まず利用するユーザーの手数料については無料で、広告枠の提供への対価である自動配信売上が同社の主な収益源となっており、その中でもアドネットワーク広告の収益が大きい。
私自身もちろんサイト自体の存在は知っていたものの、実際に利用したことはなく、正直詳しく確認するまでは単純にメルカリのリアル地元版のようなイメージで、ビジネスモデルについても、ユーザー間の売買にともなう手数料とサイト上での多少の広告で成り立っているものと勝手に想像をしていた。
その収益構造、具体的な売上構成についてはこの後詳しく解説していく。
具体的な収益構造
ジモティーの具体的な収益構造としては、現状は自動配信売上とマーケティング支援売上の2つである。マーケティング支援売上は更に、機能課金と成果報酬に分かれている。
ご覧の通り、売上の約8割は自動配信売上となっており、マーケティング支援売上は2割程である。
自動配信
ジモティーがアドネットワーク広告枠を提供し、広告がクリックされた回数や表示された回数に応じて収益を得ており、同社はサイトページ上の広告枠のみをアドネットワーク事業者に提供し、アドネットワーク事業者が広告を自動で配信してくれるモデルである。
そのアドネットワークの主な販売先としては、SupershipやGoogle Asia Pacificといったアドネットワーク事業者が占めており、これらの事業者が広告出稿者との間にはいり、広告料などを徴収している。
マーケティング支援
マーケティング支援売上は機能課金と成果報酬で構成されており、機能課金はユーザー間のマッチングをより促進させることを目的とした投稿オプション機能への対価である。
主に法人ユーザー向けの機能として、古い投稿が新着投稿としてリストの上部に戻す「リフレッシュ」機能や投稿の背景が黄色で「ハイライト」されユーザーの目にとまりやすくする機能、そして一定期間投稿が上部に固定される「PR枠」機能などがある。
成果報酬はユーザーがサイト上のリンクから提携先の外部サイトに遷移し、資料請求や契約等の「成果」に繋がるアクションを取った場合に得られる送客モデルの収益である。
これはいわゆる一般的なアフィリエイトである。
新たな手数料モデル
先ほどご説明した通り、これまでの同社の収益源はほとんが広告であるが、今後新たな収益の柱として考えているのが、ネット決済及び配送代行の手数料モデルである。
これは、ジモティーというサイトが元々、「知らない人と待ち合わせ、モノを手渡す」「現金の手渡し」「大きい荷物などを運ぶ場合には、自ら車を手配」という一部ユーザーが既に手間や不便と感じていることや、それがためにサイトを利用していないという未利用者がいるという現状のボトルネックを解消するために開発したモデルである。
今後の成長戦略
同社の今後の成長戦略として、以下取組みを挙げているので、それぞれ解説していく。
- 行政との提携
- BtoBとの提携
- ネット決済の導入
- 配送スキームの導入
行政との提携
まず、ジモティーの得意領域としてメインターゲットとしている商品が、廃棄・放置されやすい家具・家電や自転車・バイク・自動車などの大型なものであり、廃棄・放置されずにリユースされている商品を含めて全体を100とした時、その割合は約88%である。
そのうち、自宅で保管・放置するモノは約62%、行政が回収しているモノが7.4%、小売取引が6.9%、廃品回収が7%、その他4.2%という内訳になっており、同社の現時点でのシェアは1.7%という数値で、この得意領域だけでも現状取り扱い量の約51倍もの拡大余地がある。
そのため、行政との提携を進めることで、行政に代わり簡便な出品作業や出品代行により、ジモティーへの掲載商品も増やすことで、より利便性の高いサイトにする計画である。既にさいたま市など5か所の自治体と取り組み開始ししており、順次提携先を増やしていく計画である。
BtoBとの提携
先ほどの行政との提携と形は同様で、小売取引の6.9%の部分を取り込むために、小売事業者から特にジモティーで人気の商品を中心に買取・販売を行う。
こちらに関しては、提携相手にとっても元々処分する費用としてかかっていたコストの削減につながるためWin-Win関係になりやすく、かなりの数のリユース可能商品を獲得できる計画である。
ネット決済の導入
こちらに関しては、先ほどご紹介した新たな収益モデルを開発する部分に繋がるところであるが、これまで現金手渡しだけを原則として運営してきたが今後は現金だけではなく、ネット決済による支払いを可能にすることにより、それが理由でこれまでサービスの利用を躊躇していたあるいは全く利用してこなかったユーザーの出品や購入ができるようにする。
この施策に関しては、このコロナの影響をきっかけに店舗事業者の導入率や一般のユーザー認知率も高まり、世の中全体としてますますキャッシュレスの方向になっている流れがあるため、ネット決済の導入を期に若年層の利用者を取り込める可能性はあるのではないかと思う。
配送スキームの導入
こちらも先ほどご紹介した新たな収益モデルの部分で、これまで商品を発送する側も受け取る側も、時間の制約や手間がかかっていたが今後は運送代行を依頼することで、格安で大型の家具や家電が配送可能であり、互いに会って取引をする必要がなくなるため、互いに会う日時を調整する手間や制約を省くことができる。
これは、狭い地域に限定したやり取りを推し進める同社だからこそ可能な配送スキームであり、日本人特有であるような初対面の人と会っていきなり取引をすることの抵抗感やまさにこのコロナ環境下における人との接触をさけるという意味でも、知らない人よりは比較的プロの業者とのやり取りができるという部分はポジティブに受け入れられるのではないでしょうか。
総括
中古市場、リユース市場は年々拡大をしているが、メルカリに始まり、ゲオホールディングスや最近テレビでも取り上げられていたエコリングなど、メインの取り扱い商品などは多少違うものの、プレイヤーも多い印象である。
特に個人的に印象に残っているのが、エコリングという会社で、ネットではなくリアル店舗を全国に100店舗ほど展開している。その特徴としては、通常のブランド品や家電製品はもちろんのこと、他社では買取を断れたボロボロ、クタクタ、破損などの使い古した日用雑貨まで買い取らないものは無いと言っても過言では無いくらいほとんどすべてを買い取っているようだ。
このような状況の中で、個人で写真を撮ったり、知らない人とやり取りをする手間を含めて、ネットを通じて地域の人と大型の商品をやり取りをするという層やその機会がどれだけあるのかと考えると、ある程度その範囲は限られてくるのではないかと思う。そういった意味では、手数料モデルだけではなく、このサイトを通じた新たなサービス自体の拡がりを考えられると、更に訴求力の高いサイトになるのではないでしょうか。