作成日:2020.08.15  /  最終更新日:2020.08.15

時代に乗って成長したUUUMも安泰ではない

MORII RYOJI

MORII RYOJI
uuumの成長

UUUM(ウーム)の事業内容

UUUMの前身であるON SALE株式会社は携帯電話会社イー・モバイルの代理店責任者だった鎌田和樹が2013年に設立。

彼はイー・モバイルのイベントにYoutuberを呼ぶなど、独立以前からYoutubeへの理解は深かったが、後に彼は有名YoutuberのHIKAKINとの出会いをきっかけに、Youtuberと関わる中で彼らのマネジメント業務にビジネスチャンスを感じた。Youtuberは個人であることを理由に企業との商談を断られたり、そもそも企業との関わり方がわからない、税金・法律の処理がわからないなどの問題を抱えており、UUUMはこれらの業務を肩代わりすることで芸能事務所のような役割を果たしている。

動画作成に関しては再生回数を伸ばすためのノウハウ提供や画像・音楽などの素材提供、編集、撮影を担当している。しかし動画の内容や企画といった核となる部分は所属のYoutuber(同社ではクリエイターと呼ぶ)が決めることが多く、どちらかといえば対外折衝がUUUMの役割。

UUUMの事業はHIKAKINを筆頭に所属する人気クリエイターの台頭によって成長し、2017年8月に東証マザーズに上場している。同社の有名チャンネルは、はじめしゃちょー(登録者数870万人、国内1位)、HikakinTV(855万人、同2位)、フィッシャーズ(629万人、同4位)など、国内ランキングの上位を抑えている。

UUUMの収益は広告収入と企業案件

収入の中で最もウェイトを占めるのがYoutubeから広告収入。動画からの収入はUUUMの配分は収入の20%と言われており、大部分がクリエイターに入る。タレントの配分が少ない点がテレビの芸能事務所とは異なるが、これはテレビタレントが出演だけを担当するのに対し、基本的にはクリエイターが編集や企画まで担当するためクリエイターの配分が大きくなる。

2番目の収入源は企業案件。企業が宣伝したい製品を動画内で直接紹介したり、ステルスマーケティングのように宣伝したい商品を含む動画を挙げることで企業から直接広告費を得る仕組みだ。

例えばコンビニのお菓子の中で美味しい物ランキングを決めるような企画動画であれば、コンビニチェーンから広告料をもらっている可能性が高い。割合はわずかだが、自社チャンネルによる広告収入やグッズ販売、イベント関連の売上も収入源である。

グッズ販売は運営する通販サイト以外にもタイアップ商品としてコンビニで売られており、イベント関連の収入はチケット代と企業からの協賛金で構成される。その他にもゲーム開発や人気クリエイターのInstagramを通じた広告収入も微々たるものだが売上高の一部だ。

近年の業績

uuumの近年の業績

UUUMは2019年まで急成長を遂げており、2017年以降売上高は69億円⇒117億円⇒197億円⇒225億円と伸ばしている。一方営業利益は3.6億円⇒7.2億円⇒12.5億円⇒9.9億円と2020年に初めて減少した。

売上高の急成長は登録Youtuberの増加と各クリエイターのチャンネル登録者数増加による広告収入の増加が理由である。16年1Q⇒20年4Qの3か月合計動画再生回数の推移は26億回再生から144億回再生と伸びており、従業員数も100人以下だったものが500人程度となっている。

一方20年5月期は営業利益2.5億円程度減少しており、当期純利益も8.9億円から3.6億円と半分以下だ。

uuumの20年5月期の利益減少

20年5月期の利益減少は人件費を中心とした販管費の肥大が原因で、これに伴って粗利益が年々比で8億円の伸びであるのに対し販管費は10億円程度上昇している。

3か月おきの粗利益も19年4Qから現在に至るまで横ばいで株価も4000円台だったものが20年度末で2000円台まで下落している。売上高を伸ばしているものの利益構造が悪くなっていることがわかる。

従業員数を増やした背景には18年から19年への大幅な売上高上昇があったが20年に向かって上昇率が鈍化してしまい、雇用拡大した分の利益確保ができなかったようだ。

コロナウイルスによる影響

uuumのコロナの影響

人を介さないビジネスであるためコロナ禍による売上高への影響はわずかだが、20年5月期4Qは一定の影響を受けている。テレワークや外出自粛によって自宅で動画を見る人が増えたため、Youtubeからのアドセンスは売上高を伸ばしているが、企業の業績悪化や宣伝効果の見込み縮小を理由に企業からの直接の広告収入は前期比で1億円程度減少している。

最も打撃を受けたのがグッズ販売、イベント関連のクリエイターサポートその他の売上高であり、売上高は7.8億円から3.6億円と半分以下だ。売上高を全体的に見るとその他の減少分をアドセンスの増加分で補うことはできず、粗利益も3Qから1億円程度減少している。

通期の営業利益が前年比でマイナス2.5億円(12.5億円⇒9.9億円)であるのに対し当、期純利益がマイナス5.3億円(8.9億円⇒3.6億円)を記録しているのは本社移転による一時費用の原因もあるが、コロナ禍によるイベント中止や投資先の評価損失が影響している。

競合との比較

UUUMのように複数のYoutubeチャンネルと提携し、コンテンツの開拓や営業、収益化などのサービスを提供する企業を「マルチチャンネルネットワーク(MCN)」という。

UUUMは日本におけるMCNの先駆けであり、競合とは大きく差をつけている。かつてヒカル(現在は独自の事務所)が所属していたVAZ、気まぐれクック、ラファエルなどが所属するKiiiなどが競合であるが、登録チャンネルはUUUMが1万を超えるのに対し他社は数百から数十程度しかなく、上場しているのもUUUMだけだ。

競合は上場していないためIR情報を公開していないが、UUUMのように市場の影響を受けるというよりは、規模が小さいために個々のタレントの成績に影響されやすいと考えられる。後述するがYoutuberの間で人気クリエイターの独立が進んでいるため、これらの競合がUUUMを追い抜く可能性は低い。比較的規模の小さい事務所が急成長するYoutuberを3人抱えたとしても1人が独立してしまうと売上高が激減するためだ。

しかし一方で競合の近年の業績はUUUMほど明確に悪化していないかもしれない。UUUMは急成長と共に人員を拡大し、企業案件やイベントなどの広告収入以外の部分まで手を広げたが20年度5月期で思うように成長を維持できず、さらにはコロナで広告収入が以外の激減した。競合がUUUMほどの無理な拡大をしていなければ業績は安定であると推測できる。

今後の戦略

21年5月期に向けて

決算報告によると21年5月期も成長を見込んでおり、20/5に対して通年の売上高は225億円⇒286億円、営業利益は9.9億円⇒8.0億円と減少を見込むものの、当期利益は3.6億円⇒4.9億円を予想している。

営業利益の減少は販管費が52.1億円から67.5億円と増加しているためであり、これには20/5に含まれなかったクリエイター戦略投資として7.6億円が新たに含まれている。この7.6億円の投資はクリエイターの成長加速を狙った投資で、売上高の増加予想もこの投資の効果が計算されている。

長期に向けて

今後は求められるコンテンツが多様化し、多くの個人クリエイターが進出すると予想している。UUUMはこれらの個人のサポート体制を強めることで動画の質を上げ、「個人経済圏」の拡大の中でクリエイターのインフラを支えるビジネスを続ける方針だ。

一見新しい方針を掲げているようにみえるが、端的に言えば個人クリエイターのチャンネル数を増やし、個々の登録者数を増やすことで収益を得る従来のモデル変わらないともとらえられる。

uuumのアライアンス

また、芸能事務所とのアライアンスによってテレビタレントのYoutube進出を支える事業も拡大する方針だ。既にUUUMは2020年に4月に吉本興業と資本業務提携を結んでおり、タレントをサポートすることで売り上げを確保したい狙いがある。

同様にアーティストやスポーツ選手をパートナーとして支える事業も進めている。こうしたタレントはテレビで築き上げた知名度があるためチャンネル登録者数の伸びは圧倒的で、個人のクリエイターを育てるより収益化が早い。

Youtubeに依存しない事業も投資を進める方針で、音声配信アプリのREC.やライブ配信アプリSUGARを開発している。しかし単なる課金アプリとの批判も受けており、Youtube事業に匹敵するメディアとなるかは未知数だ。

今後の事業リスク

Youtube視聴者数の増加に伴い時代の流れに乗って業績を伸ばしたUUUMだが、Youtube自体が消費者にとって欠かせないものとして定着しているのにもかかわらず先行きは不安だ。

所属クリエイターの脱退

クリエイターにとってUUUMに所属することのメリットは企業案件を受けやすくなるという点にあるが、UUUMの売上高を見ても広告収入の3分の1しかない。広告収入に関してはUUUMに所属しなくても見込める収入である上に8割がクリエイターの配分であるため、所属メリットがほとんどない。

マネジメントのためだけに20%も取られたくないというのが人気Youtuberの本音だ。企業案件の収入が広告収入の20%より小さければ、UUUMから脱退して企業案件を受けられなくなったとしても収入は増える。実際に木下ゆうか(登録者数540万人)、すしらーめんりく(登録者数505万人)といった大物クリエイターもUUUMから脱退しており、2019年からこのような流れが続いている。

仮に事務所の取り分を増やそうとすればクリエイターとの契約は難しくなり、逆に減らそうとすれば収入減となる。広告収入に関しては比率を変えることができないというジレンマを抱えている。HIKAKINは2.5%株主であるため脱退の可能性は低いが今後も人気タレントが脱退するリスクは存在する。

海外のMCNでは既に2017年ごろからこのようなことが起きており、クリエイターにとっての所属メリットが少ないためMCNの成長は下火になっていた。AmazonやGAFAに追随するユニコーン企業(評価額10億ドル以上の企業)がMCNから現れなかったのも、クリエイターを囲い込むのが難しいためという分析も報告されている。

UUUM長期の方針で従来通りチャンネル数の拡大とクリエイターの成長を柱に成長を続けるとしているが、人気になったクリエイターが離れない仕組みを作らなければならないだろう。

テレビタレントの参入

キングコング梶原がカジサック(登録者数200万人)としてYoutuberデビューし、それ以外にもオリエンタルラジオ中田(登録者数270万人)が参入する等、吉本芸人も相次ぎ参入している。

吉本を契約解除されたが雨上がり宮迫もすぐに登録者数100万人を突破し、テレビタレントがUUUM所属クリエイターを脅かしている。従来のYoutuberとは比較にならないスピードで登録者数を伸ばしている点が特徴だ。しかしここにもリスクがある。

前述のとおり既にUUUMは芸能事務所とのアライアンスで収益を確保する見込みだが、テレビタレントの起用ばかりに重点を置き個人クリエイターの育成を怠ってしまうと登録者数100万人をこえるチャンネルの新規開発ができなくなる可能性がある。

テレビタレントが占めるウェイトが高くなるとUUUMは実質的な吉本興業のYoutube支部に成り下がる可能性があり、成長は見込めなくなってしまう。また、既にテレビで人気の芸人でもYoutubeでは登録者数が数万人程度という例もあり、既に飽和状態ともいえる。

Youtubeの規約変更

Youtubeによる規約の変更内容は事前に知らされず、急に施行される。暴力的・差別的表現の規制が進む中でUUUMのコンテンツとしては問題なさそうに思えるが、20年1月に子供向け動画のターゲティング広告を表示しない規約が施行され、子供向けチャンネルは影響を受けた。

どのような方向性で広告規制が進むかはある程度予想できそうだが、急な規約変更に注意しなければならない。

利益構造の改善に向けての提言

チャンネル数が多く従業員数が多いのが問題である。チャンネル数が多いと従業員も増やさなければならないが、採算の取れないチャンネルは削減しなければならない。

本来飲食店は売れるメニューしか売らないのにも関わらず、あれもこれもと取りこんだ結果、余った食材の仕入れに無駄な人員を割いている飲食店を思い起こさせる。

登録者数の比較的少ないチャンネルではUUUMの配分を多く設定し、多いチャンネルではクリエイターの独立を防ぐために配分を少なく設定する必要があるだろう。また、人気のないクリエイターのサポート業務を一部外注することができれば従業員数を増やす必要はなく、20/5期のような販管費増加による利益の圧迫を防ぐことができる。

一方で資産の部では前期末に対して総資産が41.8億円増えているのに対し、負債は短期借入金15億円、長期借入金15億円、未払金6.6億円と36.6億円も増加しているため4Qで自己資本比率が下落している。

企業案件及びグッズ販売不振、イベントの中止によって売上が見込めないため手元資金を確保したいとの思惑があるが、19年4Qを超える売上を見込めないならばこれまでの拡大路線をやめるべきだ。コロナ禍の中でYoutube上での様々な生配信ライブが盛況を迎えた中、今後集客ライブを開催する必要はない。

総括

チャンネル数の拡大と人気クリエイターのチャンネル登録者数の増加を元に成長したUUUMだが19年以降鈍化しているのにも関わらず従業員数が増え利益を圧迫している。時代の流れに乗る企業だが、拡大を急ぎ過ぎた余り経営が悪化してしまった過去の数多くの企業と同じ道を歩んでいる。

一方で今後の方針も変わらずこれまでのチャンネル数拡大路線を続ける見込みだ。芸能事務所とのアライアンスである程度の成長は見込めるかもしれないが、既に飽和状態となっておりテレビでの認知度が必ずしも有利になるとは限らない。

さらなる利益の確保が見込めないならば拡大路線を止め、収益の健全化に努めるべきではないだろうか。Youtubeに依存しない収益源の開発も望まれる。

MORII RYOJI

MORII RYOJI

士業に特化したホームページ制作会社オルトベースの代表。24歳の頃に何か面白いWebサービスを開発するため、自分自身の忘備録としてスタートアップのビジネスモデルをまとめ始めたのが「WebFolio」で今年で5年目。何かあれば気軽にFacebookから連絡してください。

執筆者

トピックス

執筆者一覧

開発の相談はこちら