CtoCとは個人間でモノやサービスを売買し合うことを指します。
一般的なビジネスモデルは、運営側が個人間で取引するための「プラットフォーム」を用意し、何らかの取引が成立した際に一定の手数料を得る仕組みです。
市場規模が年間1兆円近くあると言われるCtoC市場において、最近ではフリマアプリを中心に、様々なサービスがローンチされています。
そんなCtoC間のWebサービスを図でまとめてみました。
※各サービスの紹介は長くなるので割愛します
これらをザックリ説明すると、右上・左上は物販系のサービスで、ユーザ層が広いのが特徴。
右下はスキルや知識、時間などの無形の売買系のサービスで、個人レッスンや占い、悩み事の相談などユーザ層は限られるが、幅広いジャンルのサービス。
左下がハンドメイド物や輸入物の売買、車や個人宅のシェアなど特化型でユーザ層が限定的なサービス。
それでは各ジャンルの一部のビジネスモデル・マネタイズ手法を紹介していきたいと思います。
目次
競争が激しいフリマ・オークションのビジネスモデル
スマートフォンの普及により、カメラで商品を撮影し手軽に売買できる仕組みが広がり、敷居が低くなったこともあり、メルカリを中心に、フリル、LINE MALL、ラクマ、Sumally、ショッピーズなど市場はレッドオーシャン化している。
今までの個人間売買は、購入したのにモノが届かない、届いたモノが不良品などのリスクがあったが、運営側が代金を一時的に預かる「エクスロー」がこれらの問題を解決した。
これは購入者から代金を預かり、配達が完了した時点で初めて販売者に購入代金が支払われる仕組みで、今やどのサービスもこの形式を採用している。
買い手側は運営元に到着報告をするとあるが、一定期間を過ぎると問題なく届いたと見なされて、売り手側に入金される仕組みとなっている。
運営側からすると、手間だけが増えているようにも思えるが、ビジネスモデル上、3つの大きなメリットがある。
1つ目:レビューを増やすことができる
メルカリやフリルなどのフリマアプリでは、出品者を評価するまで代金が支払われない仕組みを作っており、これによりレビュー数を増やすことができる。
レビュー数というのは競合の参入障壁を高めることができ、特にこういった個人間取引においては信頼性という点で非常に重要視される指標になる。レビュー数が多くなればなるほど、売買成立する確率は増え、他サービスの手数料が多少安くとも、培ったレビューが全て消えてしまうので退会しづらくなる。
そのため、各社は短期的な利益を犠牲にしてでも出品者を確保することに躍起になり、最初は双方完全無料としてローンチし、ユーザ数やレビュー数を一定数確保できた時点で、手数料を徴収するケースが多い。
2つ目:仲介モデルとして運営ができる
昔のヤフオクを例に出すと、出品する際や高額商品を購入する際に、月額有料会員として登録させ収益を得ていた。
しかしこの方法だと、出品者側は売れなくても費用が発生し、購入側は高額商品を買えなくても費用が発生してしまっていた。
双方不満なく、一番綺麗なやり方は、落札された段階で手数料を支払う仕組み(仲介モデル)だが、購入者と出品者が振込先等の連絡を自由に取り合っている以上、この仲介モデルができない。
そのため、購入者の代金を一旦預かる「エクスロー形式」は、運営側が仲介モデルとしてマネタイズ(収益化)できるだけでなく、購入者・出品者のリスクを軽減してくれる、みんなハッピーな仕組みになっている。
3つ目:キャッシュフローがよくなる
エクスローを採用しているサービスの多くは、売買成立したあと、すぐ出品者に代金を振り込むのではなく、一旦運営側で留保し、出品者が引き出す場合は手数料を払って換金するか、ポイントに換えるかの2択になる。
出品者側からすれば、随時引き出すと手数料がかかり、一定の金額が貯まるまで引き出せないケースもあるので、なかなか引き落とそうとしない。
これにより売買代金が内部留保される形になる。
ポイントに換えた場合でも、1円(1ポイント)まで使い切るケースはほぼなく、一定期間でポイント失効や退会で失効など、使わないままにするケースが多く、これらの失効されたポイントは営業外利益として計上することが可能になる。
ハイブランドを安価で購入できる個人輸入系サービスのビジネスモデル
BUYMA、wajaを個人輸入系として紹介しているが、正しくは「越境EC」と言われる国境を跨いだオンライン上での商取引サービス。
海外に住んでいる人がバイヤー(売り手)として予め登録し、買うことができる物を予めピックアップしておき、国内にいる人が、それらの物を見て購入すると、売り手が自宅まで発送してくれる流れになっている。
これらのサービスで主に注目したいビジネスモデルが2つある。
1つ目:在庫を持たなくても良い
予め売り手が販売可能な商品を並べておき、それらが実際に売れてから購入する仕組みになっているので、在庫を取る必要がなく、リスクなく利益を上げることができる。
これは数年前に流行ったドロップシッピングと呼ばれる方法と似ている。
※ドロップシッピングについては後述
また買って欲しい物をリクエストする機能なども用意しており、国内にいながら海外の欲しい物を自由に購入することができる。
2つ目:フルフィルメントシステムにより、あらゆるリスクを回避
フルフィルメントとは、上述したエクスローの拡張版のようなもので、売り手から商品を預かり、検品、情報登録、採寸、撮影、在庫管理、問い合わせ対応、受注、決済、配送までの一連の作業を指す。
wajaではこの作業を全て自社で請け負っており、偽物を販売されるリスクや、売り手の発送の手間(海外→日本なので相当面倒な手間)を削減する代わりに別途手数料を徴収している。(BUYMでも偽物や不良品の対応を行っている)
一つの商品の利益が薄いと割に合わないシステムだが、ブランド物中心の商材ならではのシステムだ。
BUYAM・waja・従来のドロップシッピングを図でまとめると、以下のようになる。
モノを売買しないスキル系サービスのビジネスモデル
サイタ(前身:Cyta.jp)は大人向けの家庭教師のようなサービスで、個人が先生となり、カメラ、ペン習字、英会話、カラオケなど幅広いジャンルで何かを会得したい個人にレッスンするサービス。
coconalaは「あなたの得意で、誰かを幸せに」をコンセプトに、占いや似顔絵作成、ロゴ・イラスト作成などを500円から利用できる。
coconalaの成功要因は「ワンコイン」と「匿名可能」という、ユーザ側の出品・購買ハードルを徹底的に下げたことにより、集客が成功したと考えられる。
出品されているモノを見ていても、利益目的の出品よりかは、コンセプト通りに誰かの役に立てたことにバリューを感じる出品者が多いのが特徴。これにより購入するユーザ側は支払った価値以上の満足感を持てる。
この仕組をどうやって実現しているのかというと、徹底したコミュニティ機能にある。
モノと違ってクオリティが事前に分からない「サービス」を売買しているため、マーケットプレイスの空気感が肝心だ。そのため、良い出品者を事前に集めコミュニティ感を醸成した。良いコミュニティには良い人が集まるし、その逆も然り。公式ローンチ時のサイトの雰囲気が最も重要と考え、ベータ版の段階で友人を中心に1000人に1通1通メッセージを送って口説き、そのうち400人が登録し、200人が出品してくれた。
さらに、ローンチ前からユーザイベントなどを通じてサービスの語り部となる人を作った。ベータ版の参加者を中心に、サービスの話だけではなく自分たちのビジョン、さらには内部資料なども多く公開し、その上でココナラが広がった世の中はどうなるのかを一緒に考えるワークショップを開催するなどした。それによって、イベント参加者はそれぞれにココナラを自分ごと化し、ローンチ日には各々の言葉でココナラを宣伝してくれる存在となった。
こうした地道な努力により、熱狂的なファンを獲得し、独自のコミュニティを築き上げている。
mixiが長い期間流行っていたように、一度良質なコミュニティを築き上げれば、ユーザの離反が起きにくく、強力な唯一化要因となる。
コンセプトでコアなファンを捕まえ着実に基盤を作り、自然な形でスケールをさせる。マネタイズまで時間がかかるが、簡単に儲かるビジネスモデルは再現性があり真似されてしまうので、真面目にコツコツと作り上げていくことの重要性を再確認させられる。
総括
従来のCtoCサービスでは、様々な問題点がありましたが、エクスローやフルフィルメントシステムなど、新たな手法でこれらの問題を解決しているのがわかります。
個人間のやり取りは取引金額が小さいため、魅力的に映らない方もいると思いますが、市場規模は計り知れません。
フリマ業界は過渡期を過ぎた印象がありますが、今回紹介できなかった、個人の所有・賃借する部屋を個人に仲介するサービス「Airbnb」や、車を個人間で貸し借りできる「Anyca」や「Uber」などは非常に注目を集めています。
また最近では個人の価値を株式会社のように自由にトレードできる「VALU」や「Timebank」といったサービスが注目を集めています。
これらのサービスは危険が多く、法律上なかなかスムーズに行かないようですが、物販系のサービスが様々な問題点を解決したように、今後どうなるのか楽しみです。