どの会社でもサービスを拡大するのに不可欠なのがマーケティングである。
ただ、このマーケティングは意味がとても広く正解が決まっていない。
特にスタートアップでは不確定な要素が多く、なおかつ活用できるリソースも少ない場合が多く担当者を悩ましている。
今回は、リジョブを創業から取締役副社長として支え、約20億円で㈱じげん社にEXITするまでプロダクトを統括していた元CMOにマーケティングについての考え方や具体的な施策などを聞いた。
この記事を読めば、リソースに限りあるスタートアップは、すぐに役立つ施策のヒントとなるかもしれない。
【高梨大輔氏の略歴】
株式会社リジョブ(現じげんグループ)の創業メンバーで元取締役副社長・CMO。2014年、株式会社じげんに約20億のM&Aを経験し独立。
という華々しい略歴に聞こえるが、株を保有していなかったというおまけ話も。
2015年にビタミン株式会社を設立後、スタートアップのマーケサポートや、スタートアップに特化したマーケティングゼミ「マーケティングインサイダー」を運営している。また、2年でおよそ15社へ出資しておりエンジェル投資家としての顔や決まった住居ではなく住む場所を転々とする「アドレスホッパー」という言葉の生みの親としても「マツコ会議」他メディアにも取り上げられる。
大手企業を断ってスタートアップへ。そしてなぜ金髪!?
大学時代に大手銀行から内定を貰っていたと言う話を聞いたんですが、なぜスタートアップへの道を選んだのですか?
なんですかねー、、、
なんですかねー、、、僕はあまりそれまで自分の意志を出さずに生きてきてたんですけど「人生」に対する分岐が目の前にきたのが就活で、
それで60歳になったときにイメージができてしまったのが内定辞退の理由大きいです。きっとその道を選んだとしても頑張ってたと思うんですけど、30歳過ぎて仕事にも慣れて家庭をもって、家を買うかどうか考えてなのかなーと思ったときに、僕の生きたいイメージはそれではないなと漠然と思って。。。
家族や親戚の猛反対を無視して、スタートアップを選んだ感じです。
今その選択はよかったと思いますか?
よかったと思います、その選択をした結果の今が一番楽しいですし、生きやすくなりました(笑)
金髪にもできますもんねw
そうですねw
ですけどこの髪色にしたのって最近で
まだ4年目なんですよ
なので初対面の人には見かけ倒しとよく言われますね
喋ると以外と普通の人みたいなw
金髪についてツイッターで「後に引けないからおすすめ」ということでおっしゃっていましたね
他にも金髪って僕にとってメリットがあるんですよ
僕ってどう見えてるかわからないんですが、真面目で任せることができるみたいなイメージなんだなーと30歳くらいで気づくという、それでいろんな頼まれごとが殺到するんです(笑)それに加えて「Noを言うのが下手」癖があって、断れなくなって苦しくなるんです、、、
だから「金髪」にしました。
この見た目だとちょっとめんどくさそうな奴だと思いません?(笑)いい人っていうレッテルを貼られずらいので楽になりました、逆にこれで近づいてくる人達は、面白い人が多くなりました、あと20代の方が多くて楽しいです。
ちなみに今、エンジェル投資家としても活躍されているかと思うですけどきっかけとか合ったんですか?
他のエンジェル投資家の方々と一緒にしていただくのはちょっと恐縮です。まず前提として投資できる資産が違うんですよ、ほんとお金はないので …。
僕の場合は今稼いだ金額をすべてスタートアップに投資しているという状況なのでエンジェル投資家と名乗っていいものか、どうなんだろ。なんでそこまでして?と聞かれるのですが、新しいカルチャーをつくりそうなスタートアップに出会うと何かサポートできないかって思うんです、アイドルへの推し課金に近い感覚かもしれません。
確かに他の投資家とは違ってますね。
エンジェル投資家の方々のそうそうたるご経歴には圧巻されます、その中で自分はどんなバリューをだせるんだろうと考えた時期がありました、僕にできることはインハウスマーケティングの経験かなと。
10年ぐらいやっているので、よく相談に乗って下さいとの連絡をいただくことが多かったんですね、多いときは1日5人の相談に乗るとかもあって、これなら貢献できるなと。ただ、相談いただくのはとても嬉しいのですが、最近は時間的に限界になってきたこともあり、スタートアップを集めたクローズドのマーケティングゼミをはじめました。
CMO出身のエンジェル投資家の方は少ないので、そういう意味で少しユニークな存在なのかもしれません。
高梨さんには多くの相談が来て参画を求められることも少なくないと思うのですが
自分が参画したいと思う人や事業などに評価ポイントなどありますか?
そうですね。。。
今大きな軸はふたつあって、①CEO&コアメンバーとバイブスが合うか②「新しいカルチャー」をつくれそうか、、という点です、僕が前のめりにサポートしたくなるのがこれだって、やっとわかってきた感じです。
一番初めはマーケッターなので「この市場だからこうゆう施策を当て込めば成立するぞヨシ出資しよう」みたいな評価で考えてたこともあるんですけど、、、
当たり前ですが、実際には思い描いていた様にはならないですよね。
それは、市場変化もありますし、企業は人の集合体なのでなにが起きるかもわからないですし、これは自分が痛いほど経験しましたし。。。。
だから、応援したいと自分が思える軸というのが大事になりました。
つまりサービスよりもチームにどんな特徴があるか
どんな人がやっているかが重要ということですね
僕にとっては世界観や思想が一番大事だと思うようになりました。
よくVCの人と話しますが、結局最後は人だという話はよく聞きますね
僕の場合VCの方とは違って金額も低いので、先ほども少し触れましたが、簡単にいうとアイドルに課金している感覚が近いような気がします。
わかりやすいw
2 スタートアップのマーケティングはとにかく「コスパ」と「止血」
話は変わってマーケティングについてですが、スタートアップってお金ないことが多いですよね
そんなリソースがない中で、まずこれはやるべきという施策ってありますか?
僕の表現なんですけど「止血」をすることからはじめて、「コスパ」の高い施策をするのを提案してます。
それは無駄にお金が流れることやユーザーが離脱していくことですか
そうです!
せっかく応募フォームまでユーザーが来ているにもかかわらず離脱してしまってしまうようなことって結構多くてそれって人で例えると出血している状態と同じです。
そんな状態なのに輸血しても元気にはならないどころか誰も幸せになってない。。。
確かにそうですね
具体的な改善策の例だと、「応募フォームのひらがな入力欄って本当に必要?」とかこのレベルの話です。
僕の持ってる理論値なんですけど、入力項目を一つ消すだけで数パーセントは離脱を防げると思ってます。
他に影響が多いのが確認画面です。
確認画面って後で修正できれば良いので、確認画面が必要のないケースもあったりします。
この確認画面を削除すると5~12%は影響が出た経験もあります。
こいういう具体的な小さいことが「止血」であり「コスパ」の高い施策にも繋がっていきます。
どこから出血しているかを見極めてどんどん止めて行くことをする必要があるんですね
そうだと思ってます。
マーケティングって医療と似ているなと思う点が多くて、医者には専門が別れてる医みたいな感じで
マーケッターもそれぞれが専門領域があります。
その中で、僕は救命医という位置付けかと思ってます。
様々な問題を抱えているスタートアップをある程度の状態まで回復させることが得意で、
特定の領域に対しては専門医のマーケターにバトンを渡します。僕はインハウスマーケター出身なので専門性ではなく、どのに領域に対しても偏差値50は能力があるという感じですかね。
売上をKPIにしない方がいい!?
なるほどですね。
マーケティングに置いて重要な要素にKPIの設定があると思うんですが高梨さんはどの様な考えをお持ちですか?
多くのマーケッターが登録者の数何%アップとか売上などをKPIとして動いていますが、僕は別の考え方を提案することが多いです。
そうなんですか?意外です。
というのも僕自身の経験でもあるんですけど、忙しいからなんとなく分析してたら1ヶ月とか過ぎているなんてことが結構起きてた経験があって、
それよりは1ヶ月で5個新しいことはやってみようというKPIの方が実は前進したんです、これも実体験です。それを思い出して、このKPIをおすすめするようになりました。
それはなぜですか?
サポート先が1ヶ月経ってアクションまでできてなかった時に「すげーごめん」って思いをしたんですよね、
その際にそういえば自分も途中でKPI変えてからグロースハックチームが回ったことをそれで思い出して
因みにスタートアップのマーケッターに必要な要素ってなんですか?
サービスが実現する世界観に本気で共感してたら強いなと思います。
代表や、あとは会社のカルチャーフィットしてるかという点だと思います
マーケッター自身がサービスを好きだと思っていれば伸びるんだなーというのも見てきたので、ふわっとしてますがそんな感想をもってます。
前提を省きましたが、マーケは常にトレンドが変わるので知的好奇心が強いとか、学び続ける姿勢というのは必須です!僕もいまでも学び続けてます。
最後になるんですが最近でここマーケティングうまいなーと感じる会社やトピックはありますか?
少し寄り道からお話すると、僕はtwitterが最新のニュースソースとして一番活用しているツールで、
どうやら日本ってtwitterユーザーが多くギークな国って他にないらしいんですね。
そうなるとtwitterをいかにハックかは、マーケのイチ手法としては有効だと思ってます、という前提で、
最近でいうとペイペイが気になりましたね。
ペイペイの画面の設計って、人がシェアしたくなるようになってて、それで一時期キャッシュバックされた時のスクショがSNSでよく流れてましたよね
すごいバズってましたね
あれはシェアしやすい様に最初から設計されてたと思うんですよね
他ではオリンピックの渋滞画面あれすごいなーと思ってて
あーありましたね
あれはすごいマーケッターがいるなと思いました。敢えて渋滞させてるんだろうなーって
友達経由でマーケティング誰がやってるのか聞いてみたんですけど
どうやら普通にあれはマジで渋滞してみたいですねw
ただの渋滞だったんだw
でもマーケティングとしてはあれはUGCって概念なんですよね
例えばキノコとタケノコの里論争や赤いキツネと緑のタヌキ論争みたいに
みんなが参加しやすくユーザーがコンテンツとなる様な仕組みです。
マーケティングで拡販するときのイメージって雫が水面に落ちる時にできる波紋広がりの様なものなんですよね。
SNSとかで個々にできている波紋が広がっている中でテレビなどの大きい雫が落ちると互いに干渉して大きな揺れ生んでさらに大きく広がるんですよね。
いかに色々な施策をうまく干渉させてることが重要なんですね。
要点
まずは「止血」
せっかく集客できたユーザーを逃がしていないか
まずは、無駄な工程は無いかを調べ離脱を防ぐよう取り組む
そうしないと他の新規流入施策がうまくいっても一定数離脱し続けてしまう。
KPIは施策の個数を設定
1か月で前進させるには抽象的な分析ではなく具体的に実施完了できる施策をKPIとして設定するのがおすすめ
こうすることで、何もできない状態を抜け出せる。
やり方としては案を60~100ほど出し優先順位の高いコスパもいい5個を実施していく。
改善施策の優先度はコスパ
CV地点に近いところほど改善の影響度が高いことを意識して優先順位をつけていくと効率がいい。